STORY
#1東京の夜を望む摩天楼
#2至福のひとくち
#3甘い予感に、夜はつづく。
EBISU STORY
甘い余韻に、ほどける夜。
#1東京の夜を望む摩天楼で
「ゆるい雰囲気でみんなでご飯たべようって誘ってきたわりに、
ステーキってけっこう気合い入ってるよね」
職場から待ち合わせのお店へ向かう途中、恵美は隣でしゃべり続けている。
「そうかな?」
「そうだよ。しかも夜景キレイな店なんだって」
「ふーん」
今晩は、恵美とわたし、相手の男性陣がふたり。恵美的には“中の上くらい”らしい。
「ま、出会いどうこうじゃなくて、思いっきりお肉をたべられると思ってさ」
とか言いながらウキウキを隠せてないのが恵美らしい。
何気なくスマホで検索してみる“恵比寿 夜 デート”。
「“遊び心と余裕、上品ながらもアクティブな気分に誘う大人の街・恵比寿”だってさ」
「ちがうちがう」
「じゃ、なに?」
「“したたかにギラついた男と女の盛り場♥恵比寿”だよ」
「……。」
数分後には、テーブルについて今日初めて会う男性たちと乾杯しているであろう
恵比寿ガーデンプレイスタワーを見上げた。
ま、いいんだ、わたしは。おいしいお肉とお酒が楽しめれば。
#2至福のひとくち
なるほど、この夜景はスゴい。恵比寿、地上38階からの眺め。
東京タワー、六本木ヒルズ、あ、スカイツリーまで見える。
こんな風に東京を見るのは、初めてだ。東京って意外と狭いんだなぁ。
自己紹介も早々に乾杯。
男性陣が慣れた感じで注文していたメニューが、次々とテーブルに並ぶ。
「え、このお肉をふぐ刺しみたいにすくってたべるんですか?」
「そう、思いっきりいっちゃう感じで」と教えてくれたのは、
2つ下の山崎悠介くん。へー、こんなお肉初めて見た。
「じゃ、いただきます............ク〜〜!!」
「えっ!?」
あ、まずい、思わず声が。でも、でも溶けそう いや、
溶けたッ !
圧倒的口どけ、圧倒的甘み!これは、悪魔的だ...!!
「だ、大丈夫?」
口どけからの、この甘い余韻 !
もう一口たべたい! あ、もうなくなってる 。
「これおいしいでしょ。サーロイン・ユッケ ハーフ&ハーフ。
いくらでもイケちゃうよね」
うん、イケますイケます。もっと味わいたい。
でも他にも料理来てるし、ここで追加は頼みづらいよなぁ。
#3甘い予感に、夜はつづく。
たくさんたべて、ワインも飲んだ。おいしかった!ちょっと酔ったかな。
ふたりとも初めてだけど、おしゃべりも楽しかったし。
あとは、デザートを頼んで終わりかな。
でも
忘れられない、あの口どけ、あの甘み。
もう一口でいいから、ユッケをおかわりしたい!!
とはいえ、さすがにここで「お肉たべない?」とは言いづらいし... 。
「最後にアレもう一回頼まない?」
エッ!! ...山崎くん!
君もだったのか。うん、アレたべたいよね!
「いくらでもイケちゃうよね」なんて言ってたもんね。
賛成です賛成です。
......え、というかちょっと待って。これは、私への気遣い!?
好意!? 彼なりのアプローチ!? 恋、芽生える!?
だとしたら......、気が利きすぎなんですけどー!
そうとわかれば、ここは私も。
「わたしもたべたいかも。恵美は?」
「ふたりがたべたいならいいんじゃない。頼もうよ」
ナイス恵美!
「じゃ注文するね。スイマセン、追加で...... 」
やった!
「熟成KINTANステーキください」
ええええええええええ、そっちかーい!!
いや、ソレもめちゃめちゃおいしかったけどさ。
あの口どけ、甘み。そして恋、終わったか 。さらば山崎くん 。
「あと、サーロイン・ユッケ ハーフ&ハーフも」
ヤマザキくーーーーん!!!
しばらくして愛しのユッケがテーブルに。
「悠介、お前めっちゃたべるな(笑)」
「いや、このユッケ、一人一皿欲しいレベルだよ」
なんて話しながら、さりげなくまず私の前にそっと差し出してくれた君に、
ちょっとグッときてます。
窓の向こうに広がる暗い夜の中、東京タワーは明るく灯ってる。
帰るには、まだ早いかな。